ブログTOP > 中島 > 「ひとびと店」ベルク@新宿。

「ひとびと店」ベルク@新宿。

  • 2009-05-24 (日)
  • 中島

東京でもう一つ行きたかった場所は、新宿駅東口の[ベルク]という店である。

カフェともファストフード・レストランともビアパブともワインバーとも言える、行く人にとって「一番都合のいい使い方が可能な」不思議な店。朝7時から夜11時までやっている。

ゴールデンウィークさ中の5月3日、和歌山県日高川町の書店[イハラ・ハートショップ](井原万見子店長)にお邪魔した際に購入した『新宿駅最後の小さなお店ベルク』(井野朋也著)のおかげである。「自分たちが毎日でも寄りたい、旨くて安くて早い店」をつくるために、井野店長以下各スタッフが創意工夫し奮闘努力する数々のトライアルがリアルかつ克明に描かれている。

壮絶な試食の繰り返しや、パンやソーセージの職人さんに対する粘りの説得、狭い店内での写真展開催、「ベルク通信」の発行、立ち退き反対の署名集め…と、一つひとつのアクションが実にポジティブで、一気に読ませる。面白いだけでなく、「街にとってかけがえのない店とは何か」を読者自身に問いかける本(日本中のテナント家主は必読)。読み終わったらまず間違いなくこの店のファンになっているという罪な一冊だ。

汐留シオサイトを出て、新橋から赤坂見附で乗り換え、新宿へ。丸ノ内線改札口からJR新宿駅東口に向かって地下通路を歩くが見つからない。ひょっとしたら「中央東口」か?  いやここにもない。案の定、やっぱり「思いこみ」の間違いであった。

私は改札口と反対方向(東側/丸ノ内線から歩くと左手)にあるとばかり思っていたのだが、そうではなく通路の西側(右手)にあった。手前のプッシュ式自動ドアを開けると、パンやカレーやコーヒーやビールのたまらない匂いが立ちこめる。腹へった。1時半を過ぎているがもちろん満席。セルフゆえにカウンター兼レジの行列も私の前に3組いる。

改札口(日本一乗降客数が多い新宿駅)から徒歩15秒のカフェが、そりゃスッと座れる訳はない。満席ならスタンディングカウンターもある。ソーセージがパキンと割れ肉汁が飛び出すホットドッグにも一瞬目移りしたが、迷ったあげく五穀米と十種野菜のカレー&アイスティーのセットにする。714円。ホットコーヒーかウーロン茶のセットだったら630円だそうな。凄すぎる。

カレーが熱いのは当然としても、飯も炊きたてでお皿に盛ったばかりのアツアツ。料理とアイスティーが私のトレイに乗った瞬間、入り口横の席が空く。すばやく移動。カレー、実に旨い。そりゃステーキハウスの1,500円するようなカレーとは違うけど、こんな忙しい店で、よくぞここまでバランスのいい味で腹に沁みるカレーが作れるものだ。このカレーやったら週2回、いや3回でも全然いける。一気に極道食いをしてアイスティーをゴクゴク。はぁー(至福)。

研究会までまだ若干時間があったので、もう一品頼んで本でも読もうと思ったが、待っているお客さんもいるし、それは次のお楽しみにしてラスト一個だけ残っていたあんパンを買って店を出ようとした時に、何か引っかかっていることを思い出した。

「そや、木村衣有子さんがこの店のことを書いてたっけ」

神保町へは都営新宿線で1本だから、ジュンク堂紀伊國屋でその本を買ってから地下鉄に乗ろうと思い、あんパンをカウンターのレジに。

「ありがとうございました。またお越しください」 日限萬里子さんが生きてたらスタッフに向かって「あんたら、ホンマによう頑張ってるなぁ」とホメちぎるであろう、そんな接客。中は地獄のような忙しさだろうが、だれ一人借り物の言葉(あのマニュアル接客用語)を発していない。みな「俺らの客やし、喜んでもらわな」と顔に書いてある。

さ、「ベルク詣」は済んだ。あんパンは帰りの新幹線ででも食べるか。また来よう、と奥のドアから出てもう一度[ベルク]を振り返った瞬間……

「あるやん、その本!」

なんと、Meets Regional別冊『東京ひとりめし』をこの店でも陳列販売していた。三度目のレジ。「すんませんこの本も。このままでいいです」

木村さんはこの『東京ひとりめし』でベルクのことを書くにあたり、「ベルク通信」 15年分を一気に読んだ上で、珠玉のフレーズを抜き出した。なかでも02年7月(99号)に店長(井野朋也氏)が書いたこの一文は、客とベルクの幸福な「同盟関係」を浮き彫りにしている。

先日、ごった返す店内で客になりすましてましたら、隣で老紳士がグラスを傾け、連れ合いの方に落ち着いた口調で、わしの目の黒いうちはこの店は潰させん、と断言してらっしゃいました。どなたか存じませんが、乾杯!末永く黒い目で! (『東京ひとりめし』P52)

3年前に東京のガイドブックで原稿を依頼された際、私は[ベルク]の存在も知らず、「新宿・渋谷・池袋のターミナルで乗り換えたら人混みでストレスが溜まるだけだから、そこをエスケープする方法を選ぶべし」とし、小田急線なら千代田線を、京王線なら都営新宿線を、東横線は日比谷線を、西武池袋線は有楽町線を使えば直通電車だからまだマシだ、などと書いた。

この場で、「渋谷・池袋はさておき、新宿では15分余裕があれば[ベルク]に寄れる。旨いコーヒーとパンを腹に入れて気分転換してから行きなさい」と訂正させていただきます。

住民100人しかいない和歌山県日高川町初湯川の「書店兼日用雑貨店」で目に入った本のおかげで、新宿のど真ん中のええ店と知り合えた。井原さんには頭が上がりませんわ。次はどんな時間帯に[ベルク]へ行き、何を食べて飲もうか。旨そうなマイスターハムサンドで樽生ビールをぐびぐびやっていたオッサン、うらやましかったなぁ。

ちなみに『新宿駅最後の小さなお店ベルク』は、井野店長の一人称で語られるストーリーであるが、時折、試食の鬼であるメニュー開発者・迫川副店長に語り手が代わったりする。この迫川さんというキャラは井野店長以上になかなかクセ者そうで、私は映画『クライマーズ・ハイ』の舞台である新聞社になぞらえ、井野さんが日航機事故全権デスクの悠木和雅(堤真一)なら、迫川副店長は県警キャップの佐山達哉(堺雅人)だと勝手に思っていた。当たりは柔らかそうだけど、「とことんいったれ」的な感じが似ていたからである。

「思いこみ」というのはホンマに怖い。詳しくはこの本読んでみてください。

このブログ内をタグ検索: , , , , , , , , , , , , ,

Comments:1

Devlin 2009-05-25 (月) 16:28

はじめまして、こんにちは。ベルクの本の感想リンク集

http://www28.atwiki.jp/allsangonthecorner/pages/13.html
allsangonthecorner @ ウィキ「『新宿駅最後の小さなお店ベルク』の感想を集めてます」

にリンクを張らせていただきました。

Comment Form

コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。

Remember personal info

Trackback:0

TrackBack URL for this entry
http://www.140b.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/566
Listed below are links to weblogs that reference
「ひとびと店」ベルク@新宿。 from 編集集団140Bブログ

Home > 中島 > 「ひとびと店」ベルク@新宿。

編集集団140Bのプロフィール
140B劇場
サイト内検索
Feeds
Syndicate
    あわせて読みたいブログパーツ
track word

Page Top