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タイトル誕生の産婆役・サカモトさん。

  • 2010-04-13 (火)
  • 中島

明日はいよいよ(もう今日だが)『せやし だし巻 京そだち』(原作/小林明子・漫画/ハンジ リョオ)が店頭に並ぶが、この不思議なタイトルが決まったのは2月も終わる頃だった。

それまでは……1『中京のアッコちゃん』、2『呉服問屋のアッコちゃん』、3『京都人はこうしてつくられる』、4『で、京都人はそんなにややこしいですか?』などという仮タイトルがあれこれ生まれたが、どれも「コレや!」というところまではグサッとこない。

1は「チュウキョウって名古屋のこと?」、2は「職業マンガ?」、3は「入江敦彦の路線ですかねぇ」、4は「そこまでひねらんでも」と書店さんをはじめいろんな人から「マンガはおもしろいのに書名がなぁ」と言われ、タイトル決めが煮詰まり暗礁に乗り上げていた。

「これはもう、京都で話し合って決めなアカンな」

普段は必ず140B自慢の大白板を使ってあぁでもないこうでもないと言いながらどんどん書き加えていき、そのうちに「ひっかかるフレーズ」が出てきてそれをまたいろいろ展開するうちに形が見える、という手法でタイトルを付けていた。

が、今回は原作者と漫画家のホームであり物語の舞台でもある京都でやるしかなかろうと、2月上旬の某日にアートディレクター・坂本佳子さんが所属している富小路三条の「大向(おおむかい)デザイン事務所」に集合した。これでええタイトルが出なかったらもう万事休すやな、とかなりせっぱ詰まった心境だったが、場所がいつもと違うせいか、坂本さんの醸し出す空気が私の危惧を打ち消すような力があった。

「いろいろ出したら最後は絶対にいいのが出来ますよ、心配しなくても」

ニッコリ笑ってこのようなことを言ってくれたせいか、悲痛なはずのタイトル会議がいつしか「ほがらか」な雰囲気に包まれていたのである。何かこう、安心感のある人と空間だった。それで話が煮詰まらずにころがる。

青木(140B販売隊長)「原作者としてはどんなタイトルがええと思います?」 小林「タイトルというか、あたしが一つだけまず、と思うのは“だし巻”やねんね」 青木「ハンジさんは?」 ハンジ「あたしは“都そだち”っていう言葉にすごく惹かれる」

「だし巻」と「都そだち」か。これにもうひと押しないかなぁ…と思った時に思い出したのが「せやし」という京都的接続詞(接頭語? 感嘆詞?)だった。

かつて小林さんがバッキー井上の『京都店特撰』を見たときに言っていたこと。

「すごーい。見事にあたしと一軒もかぶってへんわ」

小林さんもバッキーも中京区が子供の頃からのホームグラウンド。歳も近い。どっかで接近遭遇はしているだろうが、そこが京都の面白さ。あるカメラマンはこの双方とよく仕事をするが、二人はほとんど出会ったことがない(そこが「狭い」京都の面白さかも)。行く店も全く違う。けれど小林さん、バッキーいずれと話していても必ず出てくる「共通語」が一つだけあった。それが「せやし」。

白い紙に書きながら「せやし、だし巻き、都そだち」 う~ん……「都(みやこ)」より「京(きょう)」の方がええかもしれんなぁ。

小林&ハンジ「だし巻きの“き”はない方がいいですね」

坂本「(微笑み倍加)出来たじゃないですか!?」

坂本さんはさっそく表紙イメージに取りかかり、ハンジさんに「じゃあメインビジュアルをだし巻にして、アッコちゃんをちょこんと出しましょうか」とリクエストする。ハンジさん、その場で紙を出してささっと表紙ラフを描く。あっという間。

私は忘れないように手帳に『せやし だし巻 京そだち』と書き留めたが、正直「こんなタイトル、ありかいな?」とその時は半信半疑だった(口で言っても“へ!?”と言われそうやし)。しかし明らかに、集合した2時間前の状態とはみんなの顔つきが違う。小林さんは「だし巻」がハンジさんは「都そだち」タイトルに入ったことで。坂本さんと青木はこの「一夜限りのセッション」のようなタイトル決めの現場に立ち会ったことで。「ええタイトルになったんやろうな」とおぼろげには感じていた。

「おぼろげ」が確信に変わったのは、やはりこの表紙が出来上がってから。現物はもっと卵の黄色が鮮やかである。

あーやっぱり出るべくして、生まれるべくして出来たタイトルやなぁとは思うが、あなたが買って手元に置く価値がある本かどうかは、実際に書店で手に取って見てみてください。売れるかどうかももちろん大事だが、この本を愛してくれる読者が必ずいそうな表紙である。

原作の小林さん、漫画のハンジさんと共に歩いてきた1年半近く(なぜ1年半なのかはいずれ書きます)の旅もいよいよ終点間近。あとは一人でも多くの読者が思い思いのアッコちゃんの物語を描いて旅をしてくれたら、版元としては最高にハッピーである。

そして、この不思議な(でもハマった)タイトルが生まれるにあたり、最後の最後に絶妙のパスを出してくれたアートディレクター・坂本佳子さんに心より感謝したい。

桜散り

『せやし だし巻 京そだち』

平台に咲く

都の黄色

 

今週の金曜日(16日)には、村上春樹の「イチキューナントカ」という化け物のような本が大量に書店に並ぶが(汗)、都の黄色は平台でずっと咲いててほしいものである。

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