「都会」に住むのと「街」に住むのとは違う。そこを分からんとなぁ。

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都会には無くなったハイボールは「街的」過ぎるわ。

こういう店やハイボールを連発で見せられと、こちらも何か書かかずにはいられなくなりますやんね。

そして彼は、それを思考的闘争として、(なにげに)『「街的」ということ』で、われわれにしかけてきた。「お前らの街にこれはあるか」、と。http://www.momoti.com/blog/2006/12/post_346.html

ということなのです。

ところでこういったハイボールは、どっちがうまいとか値段の割に味はそれなりとか、そういうことではなく、スターバックスのキャラメル・マキアート(適当です)はいいが、アイスラテはシアトルズの方が旨いとかの判断回路は働きませんね。近所にスタバとシアトルズとサンマルクがあって、気分と好み次第で店を選べるというのはとても「都会的」な現象ですね。

「都会」と「街」は違う、というのはわたしの『「街的」ということ』ののっけのところでしたが、この区別がなかなかつかない人もいて、そこのところが「街的」であるかそうでないかの分かれ目でもあるわけですわ。

デベロッパーによるまちづくりとか再開発とかでは、このところ店のリーシングが重要なことになっていて、今度の物件のテナントにはマクドではなくスタバが不可欠だとか、物販はビームスとかのセレクトショップだ、いや新しいイタリアンブランドとか、やっているわけですが、それは限りなく商売の経済軸的なことで、そこに「住む」ということになれば、都会というところは「住んでるハコさえしっかりしていれば、あとはいいショップがあれば快適な暮らしが出来る」ということが突出する。

そこが「街に住む」ということとは違っている。

そこには人付き合いなんて別にいらないし、「町会」ってそれは一体何なんです、みたいなことです。だからそこに「コミュニティ」といったような耳障りの良い単語に言い替えて持ってきてもピンとこない。第一、光ファイバーが通ってて水がちゃんと出てゴキブリは少ない、近くにいいスーパーもコンビニもスタバもTSUTAYAもある、おいしいフレンチレストランやイタリアンも、いやブティックもワインショップだってあるんだもん、それ以上のことを誰がこの「地域」に求めるの、とまあこうなるわけです。

そらそうですね。別に町内会から広報紙や回覧板が回ってこなかったりしなくてもそんなのどうでもいいし、逆にとなりの人に「どこにお出かけですか」なんて声かけられることの予想もしていない。

街は、すでに「あらかじめ失われてそこにある」。
「おーむちゃん」の下駄屋は、もうないやないか。

このところ大阪も「都心回帰」みたいな流れがあって、わたしらがいる中之島近辺でも朝日放送の新社屋と「多目的ホール」が建つ新しいまち(コピーライターによる命名で「ほたるまち」という)にオリックスが高層マンションを建てて、その低層階には、(スタバではなく)グロリアジーンズコーヒー、(関西スーパーではなく)大丸ピーコックが入って、ここはもはや「すべての道路はジャスコに通ず」の「郊外」じゃない、とエントランスやエレベーターホールの白とつや消しマット加工ステンレスのフレームに嵌め込まれたアイスグリーンのスモークガラスが、大いに主張しているわけです。

その「ほたるまち」は都会そのものですね。

三井不動産とか森ビルとかは○×「ミッドタウン」や「ヒルズ」でしたが、そこのところ大阪では「まち」なのですわ。「町」ではない。その「都心回帰」というのは「郊外一戸建て」から「都会に住む」ことで、「町」つまり「街」に住むことではないです。

東京の模造品であった郊外化を東京が模造するような時代なのですね。

と桃知は言ったがその通りで、きみが「おー」と抽出し書くところの、氷なしハイボールやトンテキ(これはすごいなあ)とかは、奴らにとって下町テーマパーク・アイテムなのですよ!(別にそれはそれでいいけれど)。

この「ほたるまち」はわたしらのオフィスがあるビルからJR新福島駅の途中にあって、なかなか堂島川の川面の空気が心地よくて、よく行き帰りに通るのですが、そこかしこにガードマンが必ず立ってますね。

ガードマンというのはそれは一体どういうことなのか、誰が何の目的で依頼してどこからのお金で、とか考えるわけですが、けれどもわたしらが帰る午後10時を過ぎるとそこは抽象的な空間でしかない。よくゼネコンとかの事務所に行けば模型がありますが、それを上から見ている。歩きながら感じるのはそんな感覚で、時にぞっとするのですけどね。

面白いのはこの「ほたるまち」に隣接する駅に近いエリア(もともと下町だった)にぽつりぽつりと長屋や町家を改造した店が増え始めて、それがロシア料理やピッツアハウスだったりするわけですが、そこに人が集まっている。10時を過ぎても立ちみでおっさんもOLも帰りに一杯飲っている。元々あったおばちゃんがやってる居酒屋やカツカレーが旨い洋食屋にも新しい人がはいるようになってきた。

そこにハイボールがあれば言うことなしなのですが、以前は都会に街的そのものの店があったのが、どんどん純都会的になってきた。酒屋がコンビニに替わり、喫茶店がスタバに代わるように。そうでないところは、へたってしまってシャッター商店街になったりする。豆腐屋うどん屋お好み焼き屋とか帽子屋下駄屋カバン屋が無くなってしまう。

そこに「あらかじめ失われてそこにある」街の哀しさがあるわけです。

こないだ思わず岸和田の居酒屋から桃知にこのことで電話しましたが、岸和田のわたしの実家の商店街の下駄屋草履屋の「伊藤履物店」の伊藤博文さんは「おーむちゃん」とわたしらは呼んでいたのですが、確か昭和20年前後の生まれですが、若い頃岸和田から浅草へ下駄製作の修業に行かされている。

伊藤履物店は繁盛店で、職人が地下足袋や雪駄も買いに来たし、わたしら小学生もズックの靴を買いに行ったりでした。その看板は、表の地面に置かれた1メートルくらいの黒いゴム草履にペンキで「伊藤」と描いたもので、閉店して40年くらい経つのだと思いますが、もの凄いというしかないディスプレーで、さすがにわたしの記憶に残っています。

浅草修業の話は、先日おーむちゃんから初めて聞いたことなのですが、昭和30年代に岸和田から浅草へというのが、ものすごくハイカラでかつオーセンティックにエリートな感じがして、彼が東京=浅草から岸和田に持って帰ってきたであろう「情報」というものが、今の彼そのものの出で立ちに、存在証明のように、確かに残っていて、たまらなくなるわけです。

おーむちゃん  

街とちゃんと付き合っているとわかることなんですが、とくに飲食店や酒場の場合はもっと哀しくて、ハイボール的な店がある日無くなってしまうと、その街には相当なダメージがあるわけですね。

かなしいというのは、痛いとか苦しいとかそういうものでなく、それは「誰かと別れること」や「何かをあきらめること」の必然的で根源的なかなしさです。そのかなしさが、わたしら街的人間をタフにするのでしょう。

それは例としては、貧乏それがどうしたんや、金持ちそれがナンボのもんや、といったことですね。貧困は確かに苦しいけれど、それを決して恥じない。わたしが岸和田という街場で教えてもらった、多分2番目に街的なことといえばこれでしょう。

その街を微分したところにある「店」というのが実は重要なんです。その店がなくなるというのは「場」がなくなる、すなわち町内会的コミュニティがなくなるということで、街にとっては大変痛いことなんです。

しかし「都会」という代物は、そういうことに関してビクともしないというか、いきなり30階のデカいビルが建ったり、知らん間にテナントがスタバがマクドに代わっているみたいな感じです。

あほくさいですね。

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2008年06月17日 22:44

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