その24 昼間に体を使って遊んだ夜に、どうしても行きたくなる韓国居酒屋。[寅のや]

久しぶりに十条河原町の韓国居酒屋「寅のや」に行ってウルテポッカやミノ天を食っていると、カウンターの隣の席にカラのごついおっさんが座った。見ると俺の高校時代の担任の先生だった。数十年会っていなかったが頑丈そうな担任の雰囲気は変わっていなかった。「先生、ご無沙汰しております、イノウエですわ、憶えてはりますか」というと「おまえを忘れる奴なんかおらんわ」とガハハーという感じで笑っていた。

ラグビーが強かった高校にラグビーの指導を兼ねてやって来たというその先生が初年度に受け持った担任が俺のクラスだった。俺がいたクラスはケンカをするタイプの不良もケンカをしなくなる非常に軟派な雰囲気のクラスだった。たぶん俺がそんな空気を作っていたのだと思う。

様々な中学から集まってくる高校入学当初は鍔迫り合いもケンカもメンチの切り合いもいろいろあった。出鼻が肝心なので俺もそういうこともした。けれども俺がケンカ的なことで勝ち上がることは無理! というのを中学時代に完璧に知っていたので俺は俺とケンカをさせなかった。ケンカをする空気を作らさなかった。

俺のポケットには、ケンカをすることが出来なくなるものがたくさん入っていた。

中学時代から遊びと好奇心を刺激するタマの多さで、カラのでかいケンカの強い不良たちや恐ろしく欲求の強い不良たちとやり合ってきたり馴染んできたりしてきた俺のポケットには、ケンカをすることが出来なくなるものがたくさん入っていた。服であり、話であり、行く店であり、音楽であり、ラブであり、酒であり、映画であり、言葉であり、大人と通じるものがポケットにはたくさん入っていた。

ラグビーの指導をかねて新任した若き先生は、ケンカが好きなタイプの筋肉的な不良の奴には完璧に対処することが出来たと思うが、俺のような軟派的であーいえばこういう的な奴は苦手だったと思う。案の定、先生とよくぶつかった。そして何度もメシを食ったし飲みもした。高校二年の時はとうとう殴られもした。でもまた飲んだりしていた。何だったんだろう。あの頃いったい何を話していたんだろう。

その先生と30年ぶりくらいに偶然会い、何杯か飲み、[寅のや]を出て十条から九条まで河原町を歩いていると十代の頃をだんだん思い出してきた。そういえばこの店の近くで映画『パッチギ!』の重要なシーンの多くが撮影された。主人公がギターを叩き壊すあの橋も川も土手もすぐそばにある。遠いとこまで来たと思ってはいても俺は坪庭から一歩も出ていない。

寅のや
何を食っても抜群にうまい。刺身、ミノ天、レバー天、手羽先、豚足。特にウルテポッカがたまらない。この店を目指す時、俺の頭はいつもウルテポッカだらけになる。そして最後はこの店の名物のチャンジャ巻をいただく。昼間から海や野球やらで思いきり遊んだ時に行きたくなる。大人の人はゴルフのあとか。

京都市南区十条通河原町西入ル北側
電話番号:075-661-2484
営業時間5:00PM→11:00PM
定休日:水曜休

2008年10月14日 16:54

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